単振り子の2段目の解を求める。
1. 単振り子を摂動で解く
単振り子と言えば、調和振動の例として出てくるイメージがある。そのときは、
として解いていた。ここでは、もう一歩先の、
について考える。
これについては、同連載の
を元にしている。
運動方程式は、
であるので、
とおくと、
となる。
を展開することを考えると、
と書ける。*1
ここで、初期開き角として、(+速度 0 )を想定して、
のように書くことにすると、運動方程式は、
と変形できる。
の第2項までの近似なので、(第1項のみを用いて近似したときほどではないが)それでも初期開き角 は十分小さい
・・・という問題設定のはずである。
なので、 で摂動展開ができるはずである。ということで、解 を、
と展開し、第2項までを取り出して用いる。*2
これを(1)に放り込み、以上の項を見なかったことにすると、
で、摂動法なので、
となるはず。
(2)は、2つの積分定数とを用いて、
のように書ける(一旦、「初期開き角がなのでだ」ということはスルーする)。なので、これを(3)に放り込んで解くと、積分定数とにより、
という形になる。*3
ここで、解の挙動に重要なところだけを残して、他を適当にとかにしてしまうと、
とできる。ちなみに、適当な定数を用いて、
としても、 の中身を考えると、たぶん解になっている(はず)。
(4)と(5)より、
となるはずだが、この式は、第2項の のせいで物理的にあり得ないことになってしまう(時間とともに振れ幅が大きくなっていく)。
これをどうにかしようというのが、テーマになる。
2. くりこむ
例えば、次のように考えてみる。*4
「振り子を揺らす実験をスタートしてから、しばらくの間目をつぶっておく。しばらく時間が経過してから目を開けて振り子を観察してみる」
このとき、振り子はどのように見えるだろうか。
目を開けた瞬間から短い時間の間は、ほぼ で記述できるような運動をしているのではないだろうか。*5
したがって、目を開けたタイミングを とすると、 の近くでは、目を開けたときの振り子の振幅や速度に応じた(つまり、 に依存するような)、 とによって、
で書けるような運動をしていたと考えられる。
次に、その他の時間帯も扱うために、摂動解を考慮に入れてみる。このときには、
として、については、 のときに(8)になるようにしないといけないことから、(6)式の方をチョイスして、
とする。つまり、
となる。
ということで、無限に大きくなるはずの第2項の をくりこめそうな式に、しれっとたどり着いた。
3. くりこんだ式で方程式を作る
(9)式は、「 に実験者が目を開けたとき」の数式だったが、実験者がいつ目を開けようが、別に振り子の運動に影響は無いはずではないだろうか。例えば、 に目を開けた、つまり、
としても、物理現象としては変わらないのではないだろうか。
ということで、を明示的にと書いてみる。このとき、
が成り立っているに違いない
・・・ということが言える。
参照元ではここから直にくりこみ群方程式に向かうが、一旦脇道に逸れます。*6
まぁだいたい次の式は成り立っているはず。
ここで、 とすると、
となるので、の値には別に関わっていないときにはこの式が成り立つんだと思う。*7
・・・と言うわけで、話をもとに戻すと、物理現象の性質を考えるなら、の値には別に関わっていないはず。なので、を介して、
となっていると考えられる。
(12)より は、だいたい くらいの関数のはずなので、(11)にその情報を入れると、はくらいのオーダーになっていることが分かる。さすがには小さすぎるのでスルーすることにしてしまうと、積分定数により、
とできる。
この情報を再び(12)に入れてやると、が出るような小さいヤツは無視して、
より、
くらいになる。*9
ここまで分かったことを(9)式に入れてみる。このとき、(常に今目を開いたような気持ちで実験を見つめる)とすると、
となる。ここで初めて、初期条件としてを入れると、*10
したがって、角度の時間変化は、
と記述できる。
ということで、上手く無限大に飛んでいく項を処理して、より精度のいい摂動解を求めることができた。
4. 感想
なんかいつの間にか無限大が処理できていた。
*1:O記法がド下手なので、O記法で書くべきところをこのように書いたり、不適切な取り扱いをしているところがあるかもしれません。なので、原文を参照してください。
*2:たぶん本当は、とか入れとかないといけないんだと思う。
*3:ってWolfram alphaに言われた。
*4:たぶんちゃんとした記述は、
国広悌二(2010)「微分方程式の縮約と包絡線―くりこみ群法の幾何学的解釈と不変多様体の構成」日本物理学会誌、Vol.65(9)、pp. 683-690
の「2. 線形振動子における『縮約』」のような形になるんだと思います。私にはちゃんと書く力量が無いので、本文のような書き方をしています。
*5: が小さいという問題設定なので、 の変化が十分小さいと見なせるような時間間隔のときには(7)の第2項も0と見なせることになるはず。ということは、その短い時間では、だいたい調和振動をしていると考えてもいいはず。
*6:自分の理解度のせい
*7:本当はちゃんととかの評価をするべき
*9:積分定数は、どうせ初期位相に飲み込まれるのでスルーします。
*10:のときの開き角がにならないといけないので、となる